開発コンセプトは「楽に・楽しく」全国的な普及を狙う新たな自社開発製品
1枚の金属板を何度か曲げると、やがて立体になっていきます。
それは、どんな形にもなれる、どんなモノにもなれる、無限の可能性を秘めています。
メタルファンテックは、製缶板金という金属加工技術を通じて、さまざまなものづくりに携わってきました。お客様のオーダーに応じた多様な加工を行うだけでなく、時には企業や大学との共同開発にも取り組んでいます。
また、自社製品の開発・設計・製作・販売にも力を入れています。
そうした取り組みの中で、近年開発した製品の一つが全国に広まりつつあります。
落花生の殻割り装置「楽っから君(らっからくん)」です。
楽っから君パンフレット
種子を傷つけずに殻を割る技術
「楽っから君」は、落花生の実を傷つけることなく、丁寧に殻を割る装置です。
その独自技術により、特許を2件取得。
また、日刊工業新聞社主催「第34回 中小企業優秀新技術・新製品賞」において奨励賞を受賞しました。
表彰式と授与された盾と賞状
この製品は、“人の手でしかできない”と思われていた種子用落花生の殻割り作業を、「楽々こなす」ことをコンセプトに開発しました。
従来、機械による殻割りでは種子にダメージを与えてしまい、発芽しないと考えられていました。
しかし、千葉県八街市の落花生研究室で行っていただいた発芽試験で、品種ごとに検証した結果、80〜98%という高い発芽率が確認されました。
「楽っから君」は、1時間当たり40~60kgの処理能力があります。
実際に導入いただいた農家さんからは、「1日で350kg処理できた」と喜びの声をいただいています。
開発のきっかけは沖縄での出会い
メタルファンテックが落花生の殻割り機の開発に関わったのは、本当に偶然からでした。
数年前、沖縄を訪れた弊社代表取締役会長 平井が現地の友人に連絡を取った際、
「ちょうど良かった。明日、落花生の苗を植えに行くから手伝ってほしい」と請われ手伝ったことがきっかけでした。
その友人は、社会福祉法人と連携し、「山原(やんばる)産」にこだわった食品加工の会社を経営しています。
この社会福祉法人では、障がい者の積極的な社会参加を理念に掲げ、その人の障がいの程度に応じて働く場を提供していました。
農業では、苗植え、水やり、収穫。
加工では、殻剥き、煎り、計量、袋詰め、ラベル貼り等。
販売では、キャッチコピー、デザイン、パンフ制作、通販サイトやJOBショップでの店頭販売。
このように、栽培から加工、販売までを通じて、多くの方が働ける仕組みがつくられていたのです。
しかし当時、その仕組みを支えている落花生の生産農家が減少しているという問題を抱えていました。
理由の一つが、「殻割り作業の大変さ」でした。
農家さんが、落花生の生産を辞めれば、農業・加工・販売までの円滑な流れが止まってしまう。
それは、多くの障害のある方々の働く場が失われることにもつながります。
“働く場”とは、単に収入を得るためだけのものではありません。
人が社会の一員として存在し、誰かの役に立っているという尊厳に関わる、大きな価値がある――そう感じました。
農業の1次産業、加工の2次産業、サービスの3次産業を足しても掛けても6になることから、
連携して取り組むことを「六次化」と称するのだそうです。
しかしながら、当時の私には初めて聞くことばかりで、果たしてどのような形で協力できるのか、想像もつきませんでした。
そんな中で、理事長が言った言葉が、今でも強く印象に残っています。
「俺たちにはアイデアはある。でも、形にできないんだ。」
私は以前、大学との共同開発で「先生のアイデアを形にしてほしい」と依頼された経験がありました。
モノづくり屋として「アイデアを形にするのが、俺たちの誇りだ」と強い思いを持っていました。
「閃いた!」
――風呂場で生まれた発想
大阪へ戻ってから「落花生 殻割機」と検索してみましたが、小規模農家が使えるような機械は見当たりませんでした。
大量生産向けの大型装置が存在することは沖縄の友人から聞いて知っていましたが、自分が思い描くものとは違う土俵のもの。
少量・多品種に対応したモノや、種子用として使える機械は、見つけられませんでした。
100年以上も栽培されてきた落花生なのに、なぜ専用機械が存在しないのか、不思議に思いました。
考えてみると、
「一粒ごとに大きさも形も違うものを、傷つけずに割るなんて難しい」からできなかったのか……
そう思い、しばらくはそのことを忘れていました。
ところが、沖縄での苗植えから1年ほど経った夏の或る日。
私は風呂に入りながら、ぼんやりと落花生のことを考えていました。
-形や大きさの違うものを加工するにはどうすればいいのか-
-世の中には、落花生以外にも同じような課題がたくさんあるのではないか-
-大小差のあるものは、広いところから狭いところへ流せば、どこかで止まるはずだ-
目を閉じると、高い壁と壁の間に立ち、奥へ行くほど狭くなる通路の先に光が見えるイメージが浮かびました。
「体の大きい人は、狭い場所を通れない――」
その瞬間、
「閃いた!」
頭の中に、殻割りユニットの立体構造が鮮明に浮かび上がったのです。
「これならできる」――そう確信しました。
試作、改良、そして商品化へ
まずは原理を確かめるため、手動式の試作機を製作しました。
仕組みはこうです。
「楽っから君」の機構は、上側が広く、下側に行くほど狭くなる「すり鉢状」の2つの筒で構成されています。
固定された外筒と、回転できる内筒の隙間内に落花生を入れて、内筒を軸線周りに左右交互に回転させることで、隙間内の落花生は螺旋状に降下します。
隙間の幅は下側になるほど狭くなるため、大きさや形状の異なる種々の落花生を同時に入れても、落花生の各々が螺旋状に降下する経路上に、各個体のサイズがぴったり嵌まる隙間の位置が必ず存在します。
この隙間の位置において落花生は強く擦られます。
従って本発明の「楽っから君」によれば、事前のサイズ分けをしなくても、大きさや形状の異なる落花生の殻をむくことができます。
一気に圧力をかけるのではなく、内筒と外筒の間で優しく擦り合わされることで少しずつ殻が割れ、中の実を割ることはなく、薄皮さえも傷つけずに、殻だけを綺麗に取り除く。
まさに、「手剥き」の優しさを、機械で再現する構造になっています。
【 楽っから君 すり鉢機構の仕組み 】
数か月後、試作機が完成。
沖縄の友人に連絡すると、「ぜひ見たい」と言って、殻付き落花生を送ってくれました。
テストでは、落花生が並んで、バレエのダンサーのようにクルクルと横に回転しながら、次々に殻割りされていきました。
その様子を見た友人は、
「すごい、まるで踊っているみたい!」
と表現してくれました。
しかし、そこから商品化までには、さらに1年以上を要しました。
当初の試作機では、割れや傷のない種子の割合を示す「正粒率」は60%程度。
半割れや薄皮の傷も多く、生産者の厳しい要求には到底応えられないレベルでした。
「これでは使い物にならない」
そこで、落花生の品種ごとに徹底した測定を行うことにしました。
殻の大きさ、種子サイズ、殻の厚み、重量。これらを一つひとつ比較し、品種ごとの最大値・最小値・平均値を丹念に分析。
そのデータを元に、すり鉢構造の上下の隙間バランスを何度も調整し、改良を重ねました。
その後、改良した試作機のテストとして、生産農家さんや加工業者さんから送っていただいた4品種の落花生を使用。
結果として、正粒率は82.1%、89.6%、78.4%、92%まで向上していました。
もちろん、落花生の劣化度や乾燥度、品種によって多少の誤差は生じます。
それでも、このテスト結果から「80%以上」は十分に期待できると判断。
殻割りユニットの設計値として、ようやく合格点を出すことができ、製品化へとたどり着いたのです。
私の開発が、お役に立っている……
先日、初期の頃に導入いただいたお客様から電話をいただきました。
最初は「何かトラブルでもあったのかな」と身構えたのですが、内容はまったく違いました。
「楽っから君はうちの『大事な収入源』だから、もし故障したら困る。他のお客さんで故障した例は無いですか?」
そんな風に、機械を大切に思い、心配してくださっていたのです。
さらに電話の最後には、
「儲かってるよ。作付面積も増やした」
という言葉までいただきました。
“なくてはならない機械”になっている。
その事実が、本当に嬉しかった。
「ものづくりをしていて本当に良かった」――そう心から思えた瞬間でした。
また、昨年の実演デモでは、ある農家さんから
「B級品の落花生がこれだけ綺麗に殻割りできるとは思わなかった。これなら十分だ!」
と採用をいただきました。
すべては、落花生の苗植えのお手伝いがきっかけでした。
現場の困りごとに寄り添い、試行錯誤を重ねて生まれたのが、この「楽っから君」です。
ただ、私たちには、全国の落花生農家さんをすべてを把握することができません。
農家さんの「困った」を解決するためには、皆様からメールやお電話で直接お問い合わせをいただく以外に方法がないのです。
「楽っから君」のデモンストレーションやレンタル、作業環境に合わせたオーダーメイド製品のご相談などがありましたら、どうぞお気軽にこちらからお問い合わせください。
また、「アイデアはある。でも、形にできない」という企業様からのご相談も大歓迎です。
期待の“一歩先”をゆく「メタルファンテックのものづくり」が、皆様のお役に立てれば幸いです。
【 製品仕様 】
-
手動式「楽っから君 I」
- 動力
- 手動(回転ハンドル)
- 処理能力
- 約14.4kg/時間
- 対象
- 小規模事業所、福祉施設など
- 特徴
- 電源不要、軽量コンパクト、キャスター付き
- 材質
- ステンレス製(衛生面配慮)
-
電動式「楽っから君 II(RK-3Z)」
- 動力
- 電動(100V 50/60Hz 0.4kW)
- 処理能力
- 約60.0kg/時間
- 対象
- 農家、加工業者、大規模事業所など
- サイズ
- 幅732mm × 奥行443mm × 高さ1,268mm
- 機能
- インバータ制御、正転・逆転機能、速度調整、
タッチパネル操作